被害届の取り下げ手続きと告訴の取り消しの違いとは
事件や犯罪に巻き込まれてしまって被害届を出したけど、何らかの理由で被害届を取り下げたいと考えることもありえます。
しかし、勝手に被害届を取り下げても大丈夫なのか、そもそもどうやって被害届を取り下げればよいのか分からなくて不安になってしまう人もいると思います。
そこで今回は、どういった場合に被害届を取り消すのか、被害届の取り下げ手続きの方法などを解説していきます。
どんなときに被害届を取り下げる?
そもそも被害届とは、何らかの犯罪に巻き込まれてしまった場合に、被害にあったことを捜査機関に知らせるための手続きの1つで、捜査を開始するためのきっかけとなるものです。
なんらかの理由があって被害届を取り下げたいと思ったときには、「被害届取り下げ願い」の書類を警察署に提出することで、被害届を取り下げることが可能です。
例えば、盗難にあっていた物が戻ってきた場合や、加害者との示談が成立した場合に被害届を取り下げるケースが多いです。
被害届を取り下げるということは、加害者への処罰を望まないという意思表示になるので、加害者は不起訴になりやすくなります。
一度、取り下げた被害届を再び提出することは難しいので、基本的には加害者との示談が成立した上で取り下げの手続きを行うようになります。
ただし、事件の内容によっては、被害届が取り下げられても捜査が継続されるものもあるので、必ずしも不起訴になるわけではありません。
被害届の取り下げ手続きの手順とは?
加害者が判明しているケースでは、基本的には示談が成立してから被害届を取り下げるようになります。
示談の内容に被害届の取り下げが含まれている場合は、
示談書に「宥恕文言」を入れることを加害者側から求められると思います。
宥恕文言とは、被害者が加害者を許し、法的な処罰を求めないという意思表示であり、示談によって解決していることを意味します。
この宥恕文言を書く場合に、被害届の取り下げる旨をあわせて書きます。
示談が成立したら、「被害届取り下げ願い」の書類を警察署に提出します。
被害届取り下げ願いの書類は、警察署で準備してもらうこともできますが、事前にパソコンなど自分で作成したものを提出するのでも大丈夫です。
被害届取り下げ願いの書類には、次のような内容を記載します。
・提出する日付
・提出する警察署名
・被害者本人の住所、氏名(氏名の横に押印)
・加害者の氏名
・事件名
・被害届を取り下げる旨の記載
弁護士を通して示談を行っていた場合は、弁護士が被害届取り下げの手続きも代理で行ってくれます。
弁護士が作成した被害届取り下げ願いと委任状に署名、捺印するだけで、被害者本人は警察署に向かう必要がありません。
注意が必要な点が、仮に示談の内容に被害届を取り下げることが書かれていたのに、被害者が被害届を取り下げなかったとしても、基本的には示談書の内容が証拠となります。
加害者が示談書を検察官に提出することで、被害者には加害者を処罰する意思がないことを主張することができます。
「被害届の取り下げ」と「刑事告訴の取り消し」の違い
被害届と同じように、犯罪の被害にあった事実を捜査機関に知らせるための手段として「刑事告訴」というものがあります。
被害届と告訴を同じものだと考えている人もいますが、それぞれ別の手続きです。
被害届は犯罪の被害にあった事実を捜査機関に申告するだけですが、告訴とは犯罪の事実を申告した上で加害者への処罰を求める意思が含まれています。
そのため、被害届の取り下げと刑事告訴の取り消しでは、事件に対する効力が変わってきます。
被害届と告訴の大きな違いは、親告罪では告訴がなければ起訴することができないということです。
親告罪は、器物損害罪や名誉毀損といった犯罪で、被害者が明確に存在し、被害者の告訴がなければ起訴することができない犯罪のことです。
一方で、被害者からの告訴がなくても起訴することができる犯罪を非親告罪と呼びます。
親告罪では告訴が取り消された時点で捜査は中断され、必ず不起訴となります。
しかし、告訴取り消しは起訴されるまでに手続きをしなければ法的効力はないので注意が必要です。
親告罪で起訴するためには告訴が必要なため、被害届を出している事件は基本的には非親告罪であるケースが多いです。
そのため、被害届を取り下げたとしても、加害者への処罰をどうするかは捜査機関や裁判所の判断で決められることになります。
もちろん、被害者に処罰を求める意思がないということが1つの判断材料となって不起訴になる場合が多いですが、事件の内容によっては必ず不起訴になるとは限らないのです。
最後に
被害届の取り下げ手続きについて解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
被害届を取り下げるのには基本的には理由は必要ありませんし、手続き自体は警察署で簡単にできてしまいます。
しかし、被害届の有無は加害者への処罰に大きな影響を与えることになるので、しっかりと考えた上で手続きを行うようにしてください。
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