日本国内には警察庁の他に警視庁と検察庁という、似たような名前の3つの組織が存在します。
今回は、警察庁と警視庁、そして検察庁の役割を簡単にご紹介し、3つの違いについて解説していきます。
「警察庁と警視庁の違いがわからない」「検察庁の役割ってなに?」など、基本的なことが知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
まずは警察庁とは何か、解説していきます。
警察庁とは、警察行政を担当する行政機関であり、内閣府の外局として内閣総理大臣の下におかれる国家公安委員会の特別の機関です。
1954年に設置されたこの機関は、警察制度の企画立案、公安にかかわる事案についての警察運営、警察行政に関する調整などを行います。
「警察」と名前はついていますが、現場で捜査をするのではなく、いわば各都道府県の警察を管理し、警察という組織そのものの運営をしている機関なのです。
次に、警視庁についてみていきましょう。
警視庁とは、日本の首都である東京都を管轄する警察組織のことです。
各都道府県には、それぞれの県内にある所轄所を統括する警察本部があります。
たとえば大阪府なら「大阪府警察本部(大阪府警)」、神奈川県なら「神奈川県警察本部(神奈川県警)」ですが、その東京版こそが「警視庁」です。
東京都だけは「東京都警察本部」とは言わず、「警視庁」と呼ばれるのです。
日本最大の職員数をほこるこの警察組織の設立は古く、1868年にも遡ります。実に、薩摩藩が存在した時代から、警視庁の前身は存在していたことになります。
警視庁において、警視正より上の警察官の任命は、警察法にもとづき、国家公安委員会が東京と公安委員会の同意を得て行うこととされています。
警視以下の階級の人事についてはどうなるかというと、
警視総監が東京都公安委員会の意見を聞いて任免することになっています。
警視庁のトップは、警視総監と呼ばれ、日本の警察官の階級においては最高位で、常時1名しか選ばれないため、エリート中のエリートのみがこの役職につくことが許されているといっても過言ではないでしょう。
検察庁は、警察官ではなく、検察官を統括する、法務省の機関です。
検察庁には、最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁、区検察庁の4種があります。
検察官は、一人ひとりが、検察権を行使する権限を有しています。
そういった意味で、独立した存在といえます。
ですが、検察官の判断が個々人によってあまりにも違っていると、 一般市民としては何を基準にしていいか混乱してしまいます。
検察官は大きな権限を有した職のため、1人ひとりを野放しにしていては、権力が暴走する可能性があります。 そのため、検察官の全体の意思を統一し、適切で平等な検察権行使を指導する機関が必要となるわけです。
また、大きな事件が起こった場合、1人の検察官に負荷がかかりすぎて対応できないという事態も生じえます。
そんなとき、検察官同士が情報共有をしながら連携できる体制も必要です。
こうした理由から、検察官を束ねる「検察庁」が組織されました。
検察庁法には、「警察庁は、検察官の行う事務を統括する」と記載されています。この検察官の行う事務とは、検察事務と検察行政事務のことです。
検察事務とは、刑事事件に対して、犯罪を捜査して控訴を提起し、判決を求めるなど、一般的な検察官の事務のことです。
検察行政事務とは、検察事務以外の事務を指します。
たとえば、広報活動などがこれにあたります。
検察庁はこういった事務全体を統括する役割を持っているのです。
これまでのご説明で、警察庁、警視庁、検察庁は全く違った役割を持った
組織だということがある程度おわかりいただけたと思います。
ここではさらに3つを比較して違いを確認していきましょう。
警視庁とは、東京都内の警察署を束ねる「東京警察本部」であり、 警察庁とは、日本全国の警察を管理・運営している機関です。
これで、その差は一目瞭然ですね。
つまり警視庁は警察庁に管理される警察本部の1つというわけです。
「あー、じゃあ警視庁は警察庁の一部で小さい機関なのか」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
そもそも、警察庁は管理運営、警視庁は犯罪捜査と業務が違います。
たしかに警視庁は警察庁の管理下にはありますが、日本の犯罪捜査の要であり、とてつもなく大きな組織なのです。
検察庁は、検察官の行う事務をとりまとめる機関です。
検察官は、警察から送致された被疑者をあらためて取り調べ、裁判にかけるかどうか(起訴するか)を最終決定する役目を担っています。
つまりは、事件が起きたとき、
警察が捜査・逮捕 → 検察に送致 → 検察が取調べ・起訴・不起訴判断
という流れを汲むことになります。
検察庁は、こうした検察官たちの業務を管理する場所です。
これでなんとなくおわかりいただけたでしょうか。
警察庁は全国の警察をまとめる運営機関、
検察庁は検察官たちを取りまとめる運営機関であり、
その職域や業務内容はまったく異なります。
3つの組織は、トップの名称もことなります。
警察庁のトップは警察庁長官、警視庁のトップは警視総監、検察庁のトップは検事総長となります。
》意外と知らない警察組織のしくみ!警察官と刑事の違いとは
今回は、間違えやすい警察庁と警視庁、それから検察庁の違いについて簡単に解説してきました。本記事が、3つの警察組織について違いを理解する一助となれば幸いです。
もっと詳しく組織の役割について知りたいという方は、それぞれの公式ホームページを確認してみましょう。