警察から、巡回連絡カードの記入を求められて、戸惑った経験がある方も多いでしょう。
今回は、「警察とはいえ、個人情報を教えて大丈夫?あのカードはなんのために記入しているの?」という人のために巡回連絡カードの役割について簡単に解説していきます。
警察が行う活動のひとつに「巡回」というものがあります。
巡回とは、管轄の地域の警察官が歩いて地域を見回ることで、犯罪や交通事故防止の連絡をしたり、警察に対する意見を住民から直接ヒアリングし、地域の安全や平和を守るために行なっている活動です。
「不審者が最近夜中にうろついているのが気になっている」「公園でシンナーを吸っている人がいたからパトロールを強化してほしい」などの情報を住民から直接聞くことで、安全維持に役立てます。
巡回連絡カードとは、地域の警察官が巡回で家庭や仕事場などを訪れた際に記入を促されるカードのことです。事件や災害など、非常時の緊急連絡に役立てる目的で警察は記入を推奨しています。
カードには、本人と家族や同居人の名前、住所、生年月日、勤務先、緊急連絡先などを書く欄があります。
ですが、警察とはいえ、プライベートな情報をカードに書くことに抵抗を感じる方も多いでしょう。
この巡回連絡カードは、どのような場面で役に立つのでしょうか?
巡回連絡カードが役に立つ事例1 自然災害が発生したとき
地震などの自然災害時に、親戚の連絡先がわからなくなってしまったというような場合、警察に巡回連絡カードがあれば、親戚の連絡先を確認することができます。
家が倒壊してしまったときには、連絡先を記入した住所録や携帯電話など電子機器をなくしてしまい、一気に親戚や家族と連絡が取れなくなるケースが多いのです。
そんなときに、巡回連絡カードは大事な人の連絡先を知ることができるツールになります。
巡回連絡カードが役に立つ事例2:交通事故で負傷したとき
交通事故などで負傷し、意識不明になった場合、病院側はどうやって家族に連絡を取ればいいか戸惑いますよね。
こんなとき、負傷者が免許証など住所がわかるものを持っていれば、その住所から巡回連絡カードを見つけ出し、家族への緊急連絡先を突き止めることができます。
巡回連絡カードが役に立つ事例3:留守中に自宅で異変が起きたとき
また、巡回連絡カードは、一人暮らしの人の安全を維持にも役立ちます。
たとえば、一人暮らしのAさんが、新聞をとっていたとします。
いつもは新聞を投函した次の日には、郵便受けから新聞が抜き取られているのに、ある日を境に、何日も新聞が読まれないままになっていた、という場合、中で倒れている可能性があります。
そういった場合に、巡回連絡カードに記載されている緊急連絡先の家族に連絡し、すぐに安否を確認してもらうことができるのです。
巡回連絡カードの記入には、そういった孤立しがちな人の安否をすぐに確認できるというメリットがあるのです。
巡回連絡カードが役に立つ事例4:1人暮らしの人の安全の維持
巡回連絡カードは、一人暮らしの人の安全を維持にも役立ちます。
たとえば、1人暮らしの老人宅で、郵便受けの新聞が溜まっているような場合、中で倒れている可能性があります。
そんなときにも、巡回連絡カードに記載された緊急連絡先の家族にコンタクトを取り、安否を確認してもらうことができます。
これまで、巡回連絡カードの目的と役立つ事例についてご紹介してきましたが、巡回連絡カードを必ずしも記入しないといけないというわけではありません。
どうしても記入したくないという場合は拒否できます。罰則もありません。
実際、巡回連絡カードが悪用される事件もゼロではありません。
2015年には、群馬県の巡査が巡回カードから個人情報を収集し、小学4年生の女児を誘拐しようとした事件がありました。
また、2016年には、長野県警のOBが巡回連絡カードから千人以上の個人情報を入手し、女性にショートメールを送るなど不正利用をした事件が起きています。
また、カード記入そのものが詐欺だったのではないかと疑われる事案もあります。昨今は警察官の制服も警察手帳の模造品もネットで購入できる時代です。制服を着ていたら警察官だろうと疑わず、個人情報を渡してしまうということもあるのです。
今回は、警察の巡回連絡カードとは何か、について解説してきました。
巡回連絡カードは、地域の安全を守ることを目的にして作られた制度です。
普段は、警察署に鍵をかけて厳重に保管されています。前述したように、いざというときに巡回連絡カードが役に立つ可能性は多いにあります。
ですが、悪用される事件があるのもまた事実です。
どうしても個人情報を警察に伝えたくないという場合は、巡回連絡カードに記入する必要はありません。
巡回連絡カードはあくまで任意のものですので、ご自身に必要だと感じた場合に記載するようにしましょう。
また、相手の警察官が本物なのかどうか疑わしいときは、名刺をもらい、その場で所属の警察署に確認を取るようにするといいでしょう。