逮捕と起訴の違い|書類送検されると有罪になるのか?
起訴や逮捕という言葉を聞いたことがない方はいないでしょう。
ですが、実際に家族が警察に逮捕された、または起訴された、となれば、どういった流れになるか、ということを認識できている方は少ないのではないでしょうか?
今回は、家族や大切な人が逮捕・起訴されたときに慌てないために、逮捕と起訴についての基礎知識を簡単に解説していきます。
逮捕されたら即有罪だ、と勘違いしている方もいらっしゃるかもしれませんが、逮捕=有罪、というわけではありません。
逮捕というのは、その犯罪を犯したという疑いがある、というだけで、逃げたり証拠を隠滅したりしないためにする行為です。
あくまで疑いですから、まだ有罪が確定しているわけではありません。むしろ、裁判で有罪が確定するまでは、基本的には無罪と推定されます。
身内が逮捕されたら焦って混乱してしまうでしょう。ですが、大切な人の無罪を信じているなら、まずは落ち着いて、これから無罪を証明していくためにこの人を支える、という覚悟が必要になってくるのです。
まず、逮捕について解説していきます。
逮捕とは、被疑者の身柄を強制的に拘束して留置場(留置所)に連れて行き、留めておくことを言います。
逮捕の主な目的は、犯罪の証拠隠滅や逃亡を防止することにあります。
逮捕には3つの種類があります。
- 通常逮捕
- 現行犯逮捕
- 緊急逮捕
通常逮捕とは、逮捕令状を示し、疑いがかけられている犯罪と逮捕の理由を告げて、犯人を逮捕する手続きのことをいいます。
通常逮捕は、被疑者の人権を保障するという観点から、裁判所に逮捕すべきかのチェックを経て、必要があると判断された場合に逮捕できる手続きです。
現行犯逮捕とは、その名の通り、現行犯で即逮捕することを言い、逮捕令状なく行われます。
たとえば、犯人が万引きしているところを目撃した警察官が即逮捕することを指します。
犯罪が今行われているということが明白であるために、裁判所のチェックは必要なくその場で逮捕されるのです。
緊急逮捕とは、被疑者が殺人罪や強盗罪など重罪を犯したと疑うに足りる理由や証拠があり、緊急性があると判断された場合、逮捕令状なく逮捕する手続きのことを指します。
ただし、緊急逮捕の場合には、裁判所のチェックを受けるために、逮捕した後になりますが、逮捕令状を請求する必要があります。仮に逮捕令状が出されない場合には、被疑者は釈放されることになります。
警察官に逮捕された場合、原則として逮捕されてから48時間以内の取り調べにより「さらに留置の必要がある」と判断された場合、被害者は検察に身柄送検されます。
しかし、48時間以内に「留置の必要がない」と判断された場合被疑者は釈放されます。
釈放はされますが身柄が解放されただけで不起訴が確定した訳ではなく、警察による捜査は続きます。
捜査の過程で容疑が晴れなければ、捜査書類が集まり次第、後日に書類送検(検察官送致)が行われます。 書類送検とは、被疑者が逮捕されない、または逮捕されたが釈放された場合に行われるもので、警察が検察庁に取り調べの内容や書類を受け渡すことです。
書類送検後、さらに検察官が被疑者の取り調べの捜査を行い、検察官が起訴や、不起訴にするか判断をします。
次に、起訴について解説していきます。
起訴とは、罪を犯した疑惑がある被疑者に対して検察官が悪質であると判断した場合に、裁判所の審判を求めることを言います。
起訴の権限は、原則、検察官が持っています。
検察官とは司法試験に合格した人のみがなれるポジションです。この検察官のみが起訴できることを起訴独占主義、といいます。
検察官に起訴されると、起訴された被疑者は、被告人、という立場に変わります。検察官が裁判で争う必要はない、と判断した場合には、不起訴になります。
不起訴の種類は大きく5つにわけられます。
- 罪とならず
- 嫌疑なし
- 嫌疑不十分
- 起訴猶予
- 親告罪の告訴取り下げ
罪とならずとは、検察官による捜査の結果、そもそも犯罪行為となる内容が認められなった場合です。
暴行事件だと思って逮捕した案件が実際は口論のみの喧嘩で暴行の実態はなかったなどの場合や、犯罪行為とみられていた行為が正当防衛であったと認められた場合などがこれに当たります。
嫌疑なしとは、捜査の結果、被疑者の疑いが晴れた場合です。
嫌疑不十分とは、捜査をした結果、犯罪の疑いが完全に晴れたわけではなかったものの、裁判において有罪の証明をするのが難しいと判断された場合。
起訴猶予とは、有罪の証明が可能な場合であったとしても、被疑者の境遇や犯罪の状況を鑑みた結果、不起訴とする、と決定した場合のことです。
告訴取り下げとは、被害者が加害者への刑事処罰を望まないなどの理由で告訴を取り下げることです。
この場合、事件の内容が親告罪(告訴がないと公訴できない犯罪)であれば、告訴が取り下げられた時点で不起訴が成立しますが、親告罪ではない事件だった場合は、被害者からの告訴が無くても起訴できるため、まだ起訴される可能性は残ります。
被疑者が不起訴処分となる為には、検察官に嫌疑が不十分であると判断されるために、警察が集めた書類(司法警察職員面前調書や実況見分調書など)やさらに、検察官が取り調べを行った際に作成される検察官面前調書などから被疑者にとって有利となる自白文書や反省文を書いたり、被害者との示談交渉を行ったりする必要があります。
これらの対処を一般人が行うのはとても難しいため、不起訴処分を勝ち取るためには、法律の専門家である弁護士を雇い、力を借りる必要があります。
不起訴処分になると、被疑者に前科はつかないですし、刑事手続が終了した場合は、拘束からも解放されることとなります。
最後に、起訴後の流れから、保釈手続きについて解説していきます。
留置所で身柄を拘束されている被疑者は、起訴が決定されると原則、拘置所という刑事施設に身柄が移されます。
しかしこの場合は保釈申請をしなかった、または申請をしたものの初犯ではない、などのケースです。
保釈とは、被告人が保釈金を納付して刑事裁判まで一時的に身柄が解放される制度です。保釈の申請は、起訴を受けたそのときからすぐに可能であり、通常は弁護士が行います。
弁護士が保釈申請書を提出すると、裁判所から保釈の許可、または却下が判断されます。保釈が許可された場合、裁判所から保釈金の金額と保釈中の制限が言い渡されることになります。
指定された保釈金の金額を裁判所に収めて、初めて保釈となります。
保釈が許可されたとしても、保釈金を集めて納めることができなければ保釈はされません。