警部や巡査など、警察官には様々な階級があります。
「階級の名前を多すぎてどっちが偉いのか分からない」
「地方公務員と国家公務員では就ける役職が違うってほんと?」
など、警察官の階級と役割について疑問がある方も多いと思います。
今回は、警察官の階級について簡単にご説明します。
警察組織に興味がある、警察官の階級の基礎知識が知りたい、
という方はぜひチェックしてみてください。
警察官の階級についてご紹介する前に、警察官の身分を語る際によく登場する、「キャリア」・「ノンキャリア」について解説しておきましょう。
警察官になるためには、大きく分けて2種類の進路が存在します。
1つ目は、大学や大学院を卒業して国家公務員試験に合格し、警察庁に入庁するという進路。
採用後は、警察大学校と呼ばれる研修機関で、実務に必要な教育を受けます。
国家公務員試験は細かく分けると、「国家公務員総合職試験(旧国家公務員T種試験)」や「国家公務員一般職試験(旧国家公務員U種試験)」に分類されます。
国家公務員総合職試験に合格して警察官になった人が、いわゆる幹部候補の「キャリア」です。階級は「警部補」からのスタートになります。
一方、国家公務員一般職試験に合格して警察官になった人は、警察庁採用の警察官として働く「準キャリア」という扱いになります。階級は「巡査部長」からのスタートです。
それによると、「警察官の階級は、警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、巡査とする」と定められています。
警視総監が一番偉い役職で、巡査がいちばん下です。
では、それぞれの役割を下の階級から順に説明していきます。
各都道府県の警察採用試験に合格し、警察学校を卒業した人たちは、この巡査からスタートします。
巡査の役割は、各警察署の交番などに勤務することです。
警察学校を卒業した警察官は、最初に数年間交番勤務にあたります。一般市民に一番馴染みがあり接する機会の多いのは巡査でしょう。
巡査として働きつつ、他の巡査に対して指導的役割を担うのが巡査長です。
階級として正式な名称ではありませんが、実務上存在する役職です。
国家公安委員会規則において、巡査長に関する規則が定められており「勤務年数が6年(大学卒業者は2年、短大・専門学校卒業者は4年)に達しており指導力を有する者、または巡査部長昇任試験に合格したもののまだ辞令が出ていない者のうち、勤務成績が優良であり、かつ、実務経験が豊富な者」の中から選考すると記載されています。
巡査としての勤務年数が長く、懲戒歴などがない場合は、優先的に巡査長に昇任しやすいといわれています。
給与も巡査より高くなります。
巡査長の上位にくる階級が巡査部長です。
国家公務員一般職試験合格者は、この巡査部長からスタートします。
巡査で採用された警察官は、一般的に昇任試験に合格することで、巡査部長に任命されます。
巡査部長は部下である巡査や巡査長の監督、指導を行ったり、上司である警部補の補佐的役割を担っています。
担当部署の主任格であることが多いです。
警察ドラマなどで、「●●刑事」と呼ばれるこの刑事とは、刑事事件を担当する警察官の事を言い、正確には「刑事」という階級名は存在しません。
刑事と呼ばれる警察官は「巡査」や「巡査長」の階級にあたる警察官で、管理職はそれぞれ役職で呼ばれます。
「巡査部長」は刑事の中では「部長刑事」と呼ばれることもあります。
巡査や巡査部長というと交番勤務のイメージが強いですが、成績や勤務態度次第では刑事課配属になることもあります。
「刑事」になるのに階級は関係ありません。
警部補は、警察署で現場責任者としての役割を担う「係長」に当たる階級です。
国家公務員総合職試験合格者は、この警部補からスタートします。
警部補は中級幹部の位置づけにあり、各種令状請求ができるようになるなど、実働部隊の長としてチームを率いる存在と言えるでしょう。
巡査部長から昇任するには昇任試験への合格が必要ですが、合格後に警察大学校での研修を修了することで、晴れて警部補の任命を受けることができます。
警部は、警察本部の「課長代理」、警察署の「課長」職に当たる階級です。
警部からが本格的な管理職と言われ、現場に直接かかわることは少なく、担当部署やチームを指揮・統括する役割を担います。
ちなみに、逮捕状の請求が可能なのは、警部の階位からになっています。
警部補までは、学歴ごとに昇任試験を受けられる実務年数が異なりますが、警部以上は学歴が問われることがなくなります。
キャリアの場合は、採用直後の研修と、交番実務を経て、試験なし昇任するため、最年少の場合23歳で警部になることも可能です。
警視は、警察署の「署長」や「副所長」、「課長」などの役職を担います。
警察本部では「管理官」などの業務に従事します。
ノンキャリアの場合、警視になるには警部として6年以上の実務経験が必要になります。定員があるため、試験ではなく選考によって昇任します。
一方キャリアの場合は、20代後半で警視の役職に就く人も多いようです。
警察本部の「部長」や「参事官」、大規模警察署の「署長」などを務める、上級管理職です。
警視正に昇格すると、地方公務員であった場合でも、国家公務員という扱いに変わります。
キャリアの場合は採用後15年ほどで昇任します。
国家公務員一般職試験に合格し採用された準キャリアの場合は、採用後25年前後で昇任します。
ノンキャリアの場合は、最速で昇任したとしても、50歳代のため、数も極めてすくなく、また、なれたとしてもすぐに定年を迎えてしまうことになります。
そのため、警視正以上になろうと思ったら、ノンキャリア(地方公務員)ではなく、キャリア・準キャリア(国家公務員)として就職するのが現実的です。
この2つの階級の大きな違いの1つが、警視正に昇任した場合は必ず国家公務員扱いになる、という点でしょう。
警視正以上の階級はノンキャリアでは昇任するのが非常に難しく、警視正以上はほぼキャリアと準キャリアしかいないといっても過言ではありません。
また、就ける役職にも違いがあります。
例えば、警視は警察署署長になれますが、大規模警察署の署長にはなれません。
大規模警察署というのは、東京都内でいえば「池袋署」「渋谷署」のような、繁華街にある人員を多く抱える警察署を言います。 大規模警察署の署長になれるのは、警視正からなのです。
同じ警察署長でも階級によって違いがあるわけです。
警視長は、警視庁の「部長」、警察本部の「本部長」などに就く階級です。
警察学校の学校長として就任するケースもあります。
キャリアの警察官であれば、採用から22年後に、成績優秀者から順次昇任します。
ノンキャリアの場合は、この警視長が、就くことのできる最高位の役職になりますが、現実的にはノンキャリアで警視長を務めているひとはほぼいないと言われています。
警察庁で「次長」、「局長」、「官房長」などを務めたり、警視庁で「副総監」などを務めたりします。
キャリアとして警視長に昇任した人は、基本的に全員が警視監に昇任します。
ノンキャリアでも、過去に警視長まで昇任した人が、退職日付けで警視監に昇任した前例があります。
警視監の定員は38名と非常に狭き門となっています。
警視総監は、国家公安委員会が東京都公安委員会の同意を得た上で、内閣総理大臣の承認を得て任免されます。
日本警察の実際の最高位は警察庁長官ですが、警察庁長官は警察の階級制度が適用されないため、階級制度上では警視総監が日本警察のトップという扱いになります。
警視庁のトップとして、事務を統括し、警察職員の監督をする役割があります。 警視総監の椅子は1つだけです。
どこまで上の地位につけるかは、キャリア・準キャリア・ノンキャリアかによって変わってきます。
早く昇進したいと考えるのなら、国家公務員総合職試験や国家公務員一般職試験に合格し、キャリア・準キャリアとして警察官になるのが最善の道と言えるでしょう。
》警察庁、警視庁、検察庁は何が違う?3つの組織の違いについて